祖母との再会

3/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 夕食時の時間帯以外でも旅館は忙しい。料理の部材調達から下ごしらえ、各部屋の清掃や準備等に従業員達は動き回る。  真菜は屋上で椅子をおいて腰かけていた。一人きり海を眺める。一人であっても時間を持てあますことがない。画用紙に水彩画で絵を描いていた。  見つめる海はまたたく間にその色を変える。まるで怒っているような藍(あい)色、深く吸い込まれそうな群青(ぐんじょう)色。   そして見るものをいやし、いたわる様にやさしい青色。優しく包み込んでくれそうな淡い水色。  その時々で顔色を変えた。季節や天気、また潮流によっても海は変わる。同じ色が二つとない。真菜はいくら見ていてもこの風景があきない。朝から晩まで見ていた。  幼い頃からそうだった。  真菜は先日の父と母の夫婦喧嘩を思い出していた。以前から母と祖母の仲が悪いのは知っていた。気高い祖母と頑固な母は折り合いが悪い。  でも、ここには母と来たかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!