祖母との再会

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 祖母は旅館の女将として祖父を支えてきた。気性の激しい祖父だっただけに気苦労も多かったらしい。その祖父が亡くなったのが十七年前だ。旅館を引き継いだ祖母が懸命に働いて守ってきた。 しばらくして父が母を婚約者として祖母に紹介した。  帰国子女である母は日本の習慣になじんではいたが、細かい点に気配りをしたりするのが苦手だった。一方の祖母は女将として細部にまで目を行き渡らせてきた。  性格が真逆の二人だった。  祖母は父に故郷に戻って旅館を引き継いでほしいと願っていた。  だが、商社勤めの父は母を選んだ。母は大阪市内から離れ加太へ戻るのを反対した。父はだいぶ迷ったらしい。母がいなければ間違いなく帰っただろうが、母への気持ちが上回った。  祖母が母へ複雑な感情を抱いているのはそうした背景からだった。
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