淡島神社の邂逅(かいこう)

3/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 声をかけるべきかと考えているとさつきが真菜に気づいた。 「あっ」 赤い口紅をつけたさつきの小さな口から驚きの声が漏れた。  白いほほに涙がつたった様な跡がある。目元は真っ赤に充血している。泣きじゃくっていたのだろう。 「さつきさん」 真菜は何か話しかけたかった。  だが、言葉が見つからない。 「真菜ちゃんに格好悪いとこを見られてしまったわ」 さつきはハンカチで涙をぬぐいながら立ち上がった。  気持ちを落ち着かそうとしているようだった。 「誰でも心は晴れたり曇ったり、雨の日だってあります。それに、この加太の地は天候も変わりやすいんですよ」 わざと真菜は無理な笑顔を作って見せる。  それをさつきは察したのだろう。 「ありがとう。真菜ちゃん。あんまり人に言えた話ではないんやけど、女同士として聞いてくれるかな」 「人に話すことによって気持ちが楽になることだってありますよ。さつきさんに涙は似合いません」 「これではどっちが大人なのかわかれへんな」 さつきの表情が少しゆるんだ。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!