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声をかけるべきかと考えているとさつきが真菜に気づいた。
「あっ」
赤い口紅をつけたさつきの小さな口から驚きの声が漏れた。
白いほほに涙がつたった様な跡がある。目元は真っ赤に充血している。泣きじゃくっていたのだろう。
「さつきさん」
真菜は何か話しかけたかった。
だが、言葉が見つからない。
「真菜ちゃんに格好悪いとこを見られてしまったわ」
さつきはハンカチで涙をぬぐいながら立ち上がった。
気持ちを落ち着かそうとしているようだった。
「誰でも心は晴れたり曇ったり、雨の日だってあります。それに、この加太の地は天候も変わりやすいんですよ」
わざと真菜は無理な笑顔を作って見せる。
それをさつきは察したのだろう。
「ありがとう。真菜ちゃん。あんまり人に言えた話ではないんやけど、女同士として聞いてくれるかな」
「人に話すことによって気持ちが楽になることだってありますよ。さつきさんに涙は似合いません」
「これではどっちが大人なのかわかれへんな」
さつきの表情が少しゆるんだ。
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