淡島神社の邂逅(かいこう)

4/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 さつきがゆっくりと口を開いた。 「私は結婚して三年になるんよ。当初から夫とはお互いに子供が早く欲しいって話し合っていた。結婚を機に仕事も辞めて専業主婦になった。家計は厳しかったけど、夫も賛成してくれた。  それが二人の待ち望んでいたことやった。  それでもそう簡単には行かなかった。なかなか妊娠しなかったの。  私が悪いのか、夫も『自分自身が原因かもしれない』と責めた。夫婦仲が悪いのではないのにお互いが目に見えぬプレッシャーを感じていた。  私は病院で検査を受けたが体に異常はなかった。それを聞いた夫は自分も病院で検査を受けるかどうか悩んでいた。もし、体に異常があるとわかったらどうすればいいのか。その点にこだわっていた。  それでも三年目の今年になってやっと妊娠した。私はうれしかったし、夫も喜んでくれた。何より、夫としては体に問題がなかった証明にもなった。この新しい命を大事にはぐくむつもりだった。  だけど、それはあっけなく終わりを告げた。流産したんよ。思ってもみなかったことだった。私は悲しみに打ちひしがれた。  それに夫の落胆は想像以上だった。二人共に落ち込むばかりでお互いを思いやる余裕がなかった。  
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!