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ふいに、本田真菜(まな)の耳に飛び込んできたのは居間で父と母が言いあらそっている声だった。
自室で机に向って本を読む彼女にとっては集中をじゃまされるのに十分だった。
「太一(たいち)さん。だからあの人に会いたくない、と言っているでしょう」
母の声は明らかにいらだっている。
「そんな言い方はええことない。仮にも僕の母親や。
それにお互いに顔も会せなくなってずいぶんとたつ。少しは大人になれ」
父がなだめようとしていた。
「以前、あの人がこの家に来て部屋のすみずみを見ながら小さなホコリやゴミを指摘したわ。
それから、これ見よがしにその場で掃除を始めた。
まるで私にあてつけるように。
昼食に出したラーメンに具材が入っていないので
『成長期の真菜には栄養がとれていない』って怒られた。
あの人は私が気に入らないのよ」
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