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さつきがぼう然とした表情をしている。男性は真菜達に近寄ってくる。
そこには笑顔はない。まなざしが真剣だった。
「なんでここがわかったの?」
さつきが疑問を投げかけた。
「スマホのGPS機能から捜索した。そうしたらここにいることがわかった。
とにかくいてもたってもいられなくて来てしまったのや」
さつきは黙ったままだった。
「手紙を読んだで。心の叫びを聞く思いや。俺も悪かった。
あの悲しい出来事の後、俺は自分のことしか考えられへんかった。さつきの気持ちをあんまり理解していなかったし、しようともしなかった。
そんな時に同僚の女性と飲み歩いてしまったんや。
愚痴や悩みを聞いてくれるし、第三者の視点で冷静に言ってくれる。甘えていた。
だが、それは間違いやった。信じてもらわれへんかもしれへんけど、その人とは何にもない。変なこともしてないで」
さつきも重い口を開いていく。
「信じるわ」
「スマホ見られたのも何とも思うてへん。前から俺も『隠し事などないから見てもええで』と言っていたのやから」
「気安く見た私も悪かったわ」
「最近、仕事が忙しかったからゆっくり話をしてなかったからな」
「私も自分勝手なとこあったかもしれへん」
「もう一回、やり直そう。まだコウノトリはおるで」
「そうやとええな」
さつきと夫が見つめ合う。
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