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小高い丘を登ると白亜の塀に囲まれた建物が姿を現した。
茶褐色の外壁が風情のある色合いを映し出す。
門前に和装した祖母の姿があった。
「おばあちゃん」
おもわず真菜は祖母の元にかけより抱きしめた。祖母に会うのは一年振りだった。
一瞬、不思議な感覚にとらわれた。昨年は自分より大きく見えた祖母が小さく見えた。
「真菜、よく来たねえ。それに大きくなったね」
祖母が目を細める。背後にいる女性に気づいたようだ。
女性が祖母の前に進み出る。
「私は今日ここの旅館を予約していた笹野(ささの)さつきと言います」
祖母がていねいに頭を下げる。
「それはようお越し下さいました。ここは山の幸も海の幸も楽しめます。真菜の知り合いなら新鮮な魚をうんとごちそうしなきゃね」
「食べ物だけじゃなく、海が見える温泉があるの。天気のいい日には淡路島も見える」
横から真菜も口をはさんだ。
「それは楽しみやわ」
さつきが笑顔を浮かべた。
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