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「にしても、まさか、お前がこんなにあっさり引き受けてくれると思わなったよ。めっちゃ交渉道具を用意してきたのに」
秋人は拍子抜けしたように言って軽く笑う。
「交渉道具?」
「ああ、俺の予想では必ずお前は『その日は休みですが、お断りします』って言うに違いないと思っててよ。
その場合はまず、『葵ちゃんにもアシスタントしてもらうから』って言うつもりだったんだ」
そう話す秋人に、清貴は眉をぴくりとさせる。
「もしそれでもダメだって、言った際には、これを出そうと思ってて」
秋人はバッグの中からクリアファイルを出す。そこには、A4サイズに引き伸ばされた葵の写真が挟んであった。
気恥ずかしそうに笑いながらの自撮り写真であり、清貴はそれを目にするなり、ごほごほとむせる。
「そ、そんなものをどこで?」
「どこでって、葵ちゃんに直接『ホームズとの交渉に使うから自撮り写真送ってくれよ』って頼んだんだけど。葵ちゃんは『ホームズさんは頑固だから、私の写真なんかで左右されないと思いますよ』って言いながら送ってくれて」
「…………」
「でも、これを引き合いに出すこともなく引き受けてくれるとはなぁ」
これはもう必要ないな、と秋人がクリアファイルを再びしまおうとすると、清貴がその手をつかんだ。
「あなたがそれを持っていてどうするんですか」
「あ、そうか。欲しい?」
差し出されたクリアファイルを清貴は奪うように手にした。
「欲しいに決まってるじゃないですか。葵さんの自撮り写真なんて初めて見ましたよ!
あかん、この恥ずかしそうな微笑みが可愛らしい!」
ファイルを手に頬を赤らめて震えるように言う清貴に、
「……やっぱ、もしゴネられても、この写真で左右されたよな。ってか、そんなお前の姿を見たら信者化した生徒も目が醒めるんじゃねえ?」
秋人は口に手を当てて、可笑しそうに笑う。
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