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「あ、でも、ホームズさんも、そろそろ帰って来る頃みたいですよ」
「えっ、そうなのか?」
「ええ。今回は塾で短期講師をしているんです。最初は『延長してもらいたい』って言っていたのに、今は『君が講師をやるのは危険かもしれないね』と言われてしまったとかで」
そう言って、コーヒーカップをカウンターに置くと、秋人さんは顔をしかめた。
「何が危険なんだよ? 女生徒を惑わせてんのか?」
「いえ、生徒は中学生男子ばかりなんですが、みんなホームズさんの熱烈な信者みたいになってしまったようで……」
「信者……」と秋人さんは目を丸くする。
それは、とても想像がつくものだった。
以前、松花堂庭園・美術館で働いていた時も、ボランティアで来ていた中学生男子が、ホームズさんの信者のようになっていたのが記憶に新しい。
「つまり皆揃って利休みたいになるってわけだ。あいつ、中二病男子の心をくすぐる何かを持ってんのかもな。下手すりゃ洗脳講師なわけだし、そりゃマジで危険だ」
怖い怖い、と秋人さんは笑う。
そういう秋人さんも、もしかしたらその一人なのでは?
と思ったものの、口に出すのはやめておいた。
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