大人の家出

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山が紅葉を始めついに秋が本格的に動き出したある日のこと。一本の電話が旅館にかかってくる。台所を掃除をしていたオカミが、電話に出ると青年の声で今月3日間ほど泊めて欲しいがいつの日が都合が良いかと訪ねた。オカミは今月はずっと部屋に空きがございます。というと青年は安心したようで詳しい日時を告げる。オカミは日時を復唱しそれではお待ちしておりますと言い電話を切る。 電話がきれると保吉は一つ息を吐き出す。保吉は大学4年生の22歳。 22歳の秋、人生の中でこれほど旅行に適した時期はない。卒業旅行という時期でもないし、大学生特有のギラついた高揚感もすっかり落ち着き旅行そのものをしっかり楽しめる時期と年齢だ。しかし保吉の心にはこの旅行を楽しんで思い出を作ろうとかそういった明るい心持ちはなかった。保吉は悩んでいた。     
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