大人の家出

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と話しかけて来たのでへーそうですか、と保吉は答える。主人が再びお食事はその方と一緒でもかまいませんか、と聞いてくるので大丈夫ですと答えると今度はオカミがおかわりはいかがですかとニコニコしながら聞いてきたので御飯のおかわりをした。お世辞抜きに美味しい食事だった。 こういうシンプルな日本食をこのような古民家でお腹いっぱい食べて、食後は縁側で熱い番茶を横に置いて、たっぷり読書をする。読書に飽きたら窓から紅葉する山をボケっと眺める。ふと山から視線をずらすと畑で農作業している主人と女将さんの姿が見えた。向こうも保吉の視線に気づいたのだろう、こっちに向かって手を振っている。遠いため顔の表情までは見ることはできないがおそらく二人ともニコニコしている。保吉は手を振り返すのは恥ずかしいので気づかぬふりをして読書を再開する。都会の喧騒を離れて紅葉を見ながら読書とは大変オツである。保吉はここに来て良かったとシミジミ思いながら、熱い番茶をすすりページをめくる。     
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