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主人を見ると何とも幸せそうだった。サラリーマン時代は毎日時間と仕事に追われ、お客と上司から怒鳴られたりする日も有っただろう。今この素朴な美に囲まれながら焼き鯖と日本酒をやる画には資本主義という邪気な成分は一切感じない。保吉はこの旅行をする前、社会人になると言う事に対して悩んでいた。しかし主人を見ると資本主義の匂いは全くせず、物質的には裕福な生活はしてないかもしれないが、精神的には大変裕福な生活をしているように思う。
このような生き方、働き方も有るのだなと思いながら酔いがまわり顔が赤い主人を見ていた。
時間が遅くなりオカミが保吉の泊まる二階の部屋に布団を敷いてくれる。酔いと旅の疲れが心地良く保吉を眠りとへ誘う。
翌朝起きると山特有の肌寒い朝の気候が保吉の眠気を取ってくれる。山は少し霧がかりトンビがその中をゆったりと飛ぶ。下に降りると、既にオカミが台所で働いており良い匂いがする。
おはようございます。と声をかけると
よく寝れましたかと一連の流れがあって
長机に食事が並べられていく。海苔を巻いてある小ぶりなオニギリと味噌汁に卵焼きとナスの漬物だ。主人もやってきて三人で朝食をいただく。
いつも朝食はあまり食べない保吉だが今日は自分でも驚くくらい胃に入っていく。なぜ旅行先の朝食はこんなに美味しく感じるのだろう。後は昨日と同じように、農作業する二人を見ながら縁側で読書をしていた。この代わり映えのない生活が何よりも美しいかもしれない。変わるのは山の景色だけで充分だ。
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