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「アイツ、また外国に行っているらしいぜ」
数ヶ月後、共通の友人からMの近況を聞き、S君はしばらくぶりにMのSNSを覗いた。旅行の趣味など無かったはずなのに、確かに頻繁に海外に出掛けている様子が伺える。しかし、渡航先や旅の目的の詳細などがほとんど書かれていない内容に、S君は胸騒ぎを覚えた。
「なあ、アイツちょっとヤバくないか?」
また別の共通の友人が、S君にMについてこんな相談をしてきた。
友人達との飲み会に、久しぶりに顔を出したM。話題が映画の話になったとき、同席していた一人が
「そう言えばM君は怖い映画に詳しいんだよね」
と言い出した。
「うん、まあね」
と答えたM君は、請われるままにお勧めの映画を幾つか挙げたが、それはどれも『カニバリズム』系の名作だった。
「みんな『怖い』とか『キモい』とか騒いでいる中でさ、一人の子が『でも実際は人肉なんて、硬くて臭くて食べられないんでしょ?』って言ったら、アイツなんて答えたと思う?」
それは、Mの隣りに座っていた彼にしか聞き取れないほどの声で
「……イイ方法があるんだよね」
と、『あるらしい』でも『あるって聞いた』でもなく、『ある』と答えたのだと言う。それれはまるで独り言の様に、自然に口から出たつぶやきだったと。
周囲の喧騒で、その答えに反応する者はいなかったが、更に友人が肝を冷やしたのは『Mの息が臭かった』事だった。
彼は以前、清掃の仕事をしていた。それもいわゆる『特殊』な清掃だ。Mから微かだが漂ってきた臭いが、彼がその仕事で嗅がざるを得なかった生涯忘れることの出来ない臭いと、同じだったと言うのだ。
S君は直接話すのを躊躇い、M君にすぐさまメッセージを送った。
「おまえまさか『肉男』と会ったりしていないよな?」
と。
しかしM君からの返信は
「へーきへーき」
の、なんとでも取れるわずか六文字だけだった。
「未だに真相は確かめられていません。正直もう深入りしたくないし」
S君は言う。
今現在、S君が交流していた『肉男』は、SNSから姿を消しているらしい。
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