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「ちょっとあんたたち! 何なのよこの部屋の散らかりようは!」
また姉に頭ごなしに怒鳴られた。今度は種も一緒である。最近家事をさぼっていたために、家の中は服やタオルなどが散乱している状態である。俺と種はソファの上で正座をさせられていた。
「おねーちゃん、ごめんなさい」
「…………」
種が謝り、俺は頭を下げた。
だけど姉は頭に血が上った状態がなかなかおさまらず、足でドンと床を鳴らした。
「あんたたちが朝から晩までイチャイチャしたいのはわかるけどね、この家は私の家でもあるんだからね! ちゃんと掃除くらいしなさいよ!」
「……はい」
二人の返事が揃った。イチャイチャと言われると恥ずかしいが実際本当のことなので何も言えない。
俺達は家のいたる所で抱き合っていた。抱き合うだけじゃいつも収まらないから困っていた。
「それとあんた!」
腰に手を当てて立つ姉にビシッと顔を指さされ、体がビクリと跳ねた。
「仕事を見つけてきてやったわよ! コンビニのレジ! ここから一番近いところよ。それでいいんでしょ!?」
「えっ!」
種が驚いた声を上げた。
「……はい。……ありがとうございます」
俺はもう一度姉に向かって頭を下げた。頼んでいたのだ。体はもうしっかりと動けるようになっているし、庭も花が咲き誇り今は水やりくらいしかやることがない。
ここで何もせずに居続けるのは居心地が悪くなっていたところだった。
「ゾンちゃん、だめだよ。外に出たらまた怖い人来ちゃうかもよ? 危ないよ?」
種が心配してくれる。種にとって俺は子供のように心配な存在のようだ。
「いいのよ、種。こいつはもっと外に出た方が。別に追い出すわけじゃないしちゃんと帰って来るわよ」
「ゾンちゃん、そんなことしなくてもゾンちゃんはずっとここにいてもいいんだからね?」
種は心配そうな顔をして俺の腕を掴む。
「大丈夫よ、種。ちゃんと帰って来るから。仕事は昼間の数時間だけだし近いからすぐに会いに行けるし。それなら寂しくないでしょ? ね?」
「……ゾンちゃん」
「…………」
種があまりにも泣きそうな顔で目を潤ませて俺を見るから、俺は思わずキスをしてしまった。
すると姉からまた怒鳴られた。
「人の話を聞けー!」
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