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「もしもーし。もしもーし」
背中に手を置かれ、揺すられて目を覚ました。
俺はいつの間にか仰向けではなくうつ伏せで寝ていた。頬に当たるのも畳の感触じゃない。
……おかしい。固い。
「もしもーし」
何度も同じ言葉を繰り返す男の声に苛ついて目を開けると、男の顔が目の前にあった。
久しぶりに見る生き物だったが俺はまた目をつぶった。
なぜ自分がこんなところで寝ているのか分からなかったからだ。部屋の畳の上で目をつぶったあとの記憶が全くなかった。なぜか体のあちこちも痛い。
しかもどう考えても頬に当たるこの感触はアスファルトである。
「もしもーし。ここで寝られると困るんですけどー」
男はわざと俺の耳元に口を寄せて言った。俺はそれを振り払おうとしたが腕を持ち上げることさえできなかった。
力と言う力が出ない。
「あれ?もしかして起き上がれない感じ?」
男の声は妙に明るい。そういえば瞼を隔てた眼球にも光が入ってきている気がする。昼間か。ますます自分がなぜここで寝ているのか分からなかった。眠ったのはたしか真夜中だったはすだ。
「えー、ほんとー?」
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