種とゾンビ

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 男はそう言うと俺の腕を持ち上げてそのまま俺の体を抱き上げた。首の座らない赤ん坊のように俺の頭はぐらりと揺れた。 「軽っ!」  ぐらりぐらりとしばらく揺れていると今度は柔らかい布地の上に寝かされた。 「もしもーし、ご飯食べますかー? パンがいいですかー?」  男は飽きもせず耳元で話し掛けてくる。 「コーヒーですかー? ビールですかー? 牛乳ですかー?」  うるさくて、仕方なく小さく顎を動かすと男が立ち去るのがわかった。  しばらく目をつぶっていると硬い物を背にして座らされた。男は俺の体をまるで人形のように簡単に動かす。わずかに目を開けるとまた光が入ってきた。唇に何かが当たっている。 「お口開けてくださーい。みそ汁ですよー」  こじ開けられるように口がわずかに開くと液体が中に入ってきた。 「具は細かく切りましたから、このまま飲み込んでくださーい」  そう言われても俺の体は飲み込むことを拒否していた。飲み込み方を忘れてしまったみたいに。 「いいですかー? これ飲まないと警察呼びますからねー? 住居不法侵入ですからねー?」 「…………」  俺は目を開けてやっと男の顔をしっかりと見た。  ……体の大きい若い男。そんな感想しかなかった。 「泥棒の可能性だってありますからねー。俺が通報したらお兄さんのお母さんやお父さんが困りますよー?」     
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