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だが本当は全てこの女が父親を操ってやらせたことだった。
この女には心がない。あの家で父親の愛情を使って洗脳して支配し、俺を恐怖と暴力で支配していた。
「ね?」
女が俺に微笑みかけた。だがそれは俺には恐ろしい顔に見えた。笑顔なのに笑顔に見えない。
「……だめ」
横で種が首を振った。
「この人は絶対にだめ」
女が種を見た。微笑んだままだ。
「どうも匡お世話になりました。ですがこの子は返してもらいます。私の大事な息子ですので」
「だめっ!」
そう言って種が動き、女の後ろにあるドアを開けた。
「帰って! ゾンちゃんはずっとここにいるから! 絶対に渡さないから!」
女は振り返り、種と見つめ合ってから俺を見た。
「匡、また来るわね。お母さんを一人にしないでね」
そう言うと女は出て行った。
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