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「叔母さんは叔父さんがいなくなってしまったせいで、あの家に居辛くなったんだ。だから叔母さんは何とか匡をあの家に呼び戻したいんだよ」
晃の車の中で事情を聞いていた。
実家は郊外にあり、種の家からは車で一時間ほどかかる。徐々に景色からは背の高いマンションが減り、緑が増え、古い造りの家が建ち並び始める。
古い駅に寂れた商店街。何故か晴れていてもくすんで見える街並みだった。
「本当はみんな知っていたんだ。叔母さんが叔父さんと匡を支配してるってこと。匡が殴られてるのも知ってて、見て見ぬふりをしてたんだ。だけど叔父さんが捕まってしまったからもうそれができなくなったんだ。親父たちは叔父さんと叔母さんを離婚させようとしてる」
近くに住む親戚は多くてみんな親密だった。
だけど昔ながらの風習で父親は長男だったから誰も父親に口出しができなかった。それもあの女は利用したんだ。
晃が自嘲気味に笑った。
思えば晃だけがずっと俺を助けようとしてくれた。
「匡、本当に戻るのか? 叔母さんと二人で暮らすつもりか?」
「…………」
俺の本当の家はこっちなんだ。冷たくて暗くて怯え続けたこの家が俺の家なんだ。
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