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「このゾンビどうしたの?」
「拾った」
頭上から声がしていた。男と女の声だ。
「拾ったって、これからどうするのよ?」
「んー、みそ汁は飲めるようになったからーそろそろお粥も作ってあげようかなー? お風呂も入れてあげてー」
「まさかあんたこのゾンビ、飼うつもり!?」
「うん。だってご飯あげてたら愛着が湧いてきちゃった」
「あんたね! ゾンビって言っても元は人間なのよ!? しかもまだこいつ死んでないのよ!? 人間は飼っちゃだめなの!」
「えー! じゃあ捨てろって言うの!?」
「そうじゃない! 然るべきところに連れて行くべきって言ってるの!」
目を開けるとは顔の似た二人が視界に入った。
一人は長い黒髪の女で、もう一人は何度も見ている若い男だ。それ以上の感想はない。
二人を見ていると男の方が俺に気が付いた。
「あっ! 起きた! みそ汁持って来る!」
男はバタバタと音を立てていなくなった。
そういえば空腹を感じていた。
これは生きている証拠だった。俺はまだ生きている。体が生きようとしている。残念なことだった。
「ちょっとあんた」
気付くと女が腰に手を当てて俺を睨んでいた。
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