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「あの子の優しさにつけ込んでこのままここに居座る気じゃないでしょうね!?」
「…………」
全くそんな気はなかった。動けるようになればすぐにでも出ていくつもりだった。
「あの子はね、あの年にしては子供っぽいのよ。だからあんたを本気でペットとして飼おうとしてんのよ。あんたそれでもいいの!?」
……子供でもこんなゾンビを飼おうとは思わないだろう。
「ちょっとあんた聞こえてるんでしょ!? なんとか言いなさいよ! おいっ!」
女が俺の胸ぐらを掴んで揺すると、俺の体は浮かび上がり、頭がまたぐらりぐらりと揺れた。その揺すり方は船酔いしそうな程の勢いだった。
「あっ! いじめないでよ! 俺のゾンビ!」
突然胸ぐらを掴む手がはずれ、俺は枕の上に倒れた。
「なに言ってんのよ! これはどう見ても痩せこけただけのただの男じゃないのよ! かわいくもないし! 飼ったって手間がかかるだけよ!」
「うるさいっ! お姉ちゃんはもう帰って!」
「ちょっと! 放して……!」
男がぐいぐい姉を引っ張って行く姿が見えた。男は体が大きく、あの細身の女では敵わないだろう。しばらくすると男が一人で戻って来た。
「さ、ご飯食べようか。今日からはお粥付きだからね」
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