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「…………あっ…………あっ…………」
窓を開け放ったベランダからは色とりどりの花々が見える。春の優しい光も差し込んでいる。
宝物を隠すように家の一番奥に配置された小さな庭は春の喜びに溢れていた。
きっとこの家を建てた人はこの光景を見たかったに違いない。
「……んっ……んっ……んっ……んっ……」
日中と夜遅くになればこの家には俺と種しかいなくなる。裸で抱き合っていても誰かに見られることはない。
二人とも初めてで最初は試行錯誤しながら。今は当たり前のように種は俺を居間の絨毯の上に倒し、顔の横に手を付いていた。
「……ゾンちゃん」
大きな体を屈ませ、俺にキスをする。俺は裸の種の背中に手を回した。すると開いた足にさらに圧力がかかった。
「……ゾンちゃん、好きだよ」
種がさらに欲するように口の中をまさぐり、体の動きが激しくなった。俺は足を種の腰に巻き付け体をさらに密着させた。
すると体の中心から伝わるあまりの快感に、外に飛び出してしまったような感覚になり、家の中にいることを忘れてしまう。
「……んっ……あっ……あっ……んっ……んっ……んんんっ……」
また体が弾け飛びそうになって種の体に必死にしがみついた。感情が一気に溢れ出る。
「……ああっ……ああっ……ああっ……ああっ……!」
この瞬間、今まで起きた過去の全てを忘れそうになる。
起きたことは全て種に会うためだったと、俺の中で全てを消化して全てを許せると思う。
「……あああっ……!……あっ……あっ……あああ…………っ!!」
意識が一気に弾け飛んだ。
体が何度も震え、種の肩を指が白くなるほど掴んだ。
気付くとまたいつの間にか天井の窓を見つめていた。青空が見える。
ゆっくりと視線を下ろしながら種から足を剥がした。体が重くなり、絨毯に埋まりそうになる。
種の頭が胸に乗り、二人で目をつぶった。
「…………」
ベランダから入る春の日差しが温かく、裸の俺たちを包んでいるようだった。
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