種とゾンビ

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 よく晴れた日曜日に庭でバーベキューをすることになった。高橋が道具を持ってきてくれたのだ。 「すみません、すみれさん。その皿取ってください」  姉はタレの染み込んだ肉が乗った皿を高橋に渡した。高橋がそれを網の上に乗せて焼く。肉の焼けた匂いが広がった。 「もうビールないわよー!」  姉がそう言うと「はーい」と返事して晃が家の中に入って冷蔵庫にビールを取りに行った。  二人ともまだ姉のことが好きみたいだ。わざわざこの家に来るのはそのためだろう。  姉は間違いなくそれに気付いているだろうが、さっきからビールを飲みまくり肉が焼けるタイミング待っては焼けると片っ端から食べまくっている。  俺と種は庭の端っこに置いた小さなベンチにのんびりと座っていた。種は自分で作ったサラダを食べ、俺はお茶を飲んでいる。  暑さが増した日光を肉の焼ける匂いと共に浴びていた。 「今日は暑いね」 「…………」  種の言葉に頷いた。春の日差しに夏の暑さが入り込んでいた。 「匡、ちょっといい?」 「…………」  屋根たちに光を降り注ぐ空を見上げていると、姉にビールを渡した晃が目の前にやって来た。種の方をちらりと見て言いにくそうに口を開いた。     
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