種とゾンビ

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「叔父さんのことだけど……」 「…………」  すっかり父親のことなど忘れていた。  俺はもう二度と関わるなと晃の父親からも言われていた。きっとそれは俺を放っておけない晃を守るためだろう。 「親戚の家から逃げ出したらしいんだ」 「…………」  父親は執行猶予の間は遠くの親戚の家にいるはずだった。 「色々と一人雇って調べてみたんだけど、どうやら叔母さんのところにいるみたいだよ」 「…………」  金を受け取ったくせにまた二人で暮らすつもりなんだろうか。洗脳がまだ溶けていないのか。  それとも……。  やっぱりあの人たちのことは俺には理解できない。 「また匡のところにも来るかも……」  俺は首を横に振った。 「ゾンちゃん……」  種がまた心配そうな顔で俺を見ている。俺はもう種のことしか信じないと決めていた。また来たとしてもあの人たちのもとに戻ることは二度とない。  何があっても種と一緒にいると強く決めていた。 「……大丈夫」  そう言って、種に向かって口の端を上げて見せた。 「…………」  種は驚いた顔をしてすぐに笑ってくれた。それは温かい日の光が当たり笑っているだけで褒めてやりたくなるような笑顔だ。  俺もいつかこんな笑顔ができるようになりたいと思った。
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