29(承前)

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 明るい茶髪の青年少尉が肩をすくめた。 「いや、ぜんぜん。あそこはメンバーは優秀だけど、指揮官がダメだ。ぼくかタツオが指揮すればトップも狙えると思うけどね。天童くんは部下の命を軽んじる作戦を立てるから、最後のところで部下がついてこない」  女皇直属であるエリート軍団・近衛四家筆頭の次期当主という隔絶した地位が、兵士の命を軽く思わせるのかもしれない。ワタルのプライドの高さは驚くべきものだ。同じ近衛四家の東園寺家さえ、序列が下ということで見くだしている。 「そうだね。うちのジャクヤについても、自分のもちもの、あるいは犬みたいな扱いだ」  ジョージは手すりのむこうの夜を見ていった。 「犬にも心はある。いつか飼い主の指を噛(か)みちぎるかもしれないよ」  実際、ジャクヤは天童航の命を狙っていた。分家の子どもたちのあいだで、血みどろの殺しあいをさせられた記憶はいくつになっても消えないという。
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