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怪物
少女は自分の腕にかけられた金属の輪を、無表情で見つめていた。
その目はどこまでも無感情で、自分の身に起きていることにさえ、興味がなさそうに見えた。
彼女の名前は小谷加奈子。十七歳。地元の高校に通う二年生。
とある廃マンションの屋上でぼんやりと空を見つめていた。
七分丈のジーンズにスニーカー。七分袖のボタン付きシャツ。濃いブラウンの髪をポニーテールにして、夏の風邪に揺らしていた。
青い空と照り付ける日差し。にも拘らず、彼女の肌は美しく白かった。
彼女はあまりに美しく、無害に見えた。
そのマンションの下に、幼馴染の転落死体さえ転がっていなければ。
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