怪物

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 取り調べの席でも、彼女は無表情だった。  ただ、静かに座っているだけ。 「どうしてあんなところにいたの?」 「呼び出されました」 「君が殺したのかい?」 「多分……」 「多分ってどういうことだい?」 「怪物が……出たんです」 「怪物?」  訳が分からず問い返す刑事に向かって、加奈子ははっきりと頷いて見せた。 「怪物ってなんだ?」 「……さあ? 私の中から出て来たんです」  彼女は小首を傾げた。 「怪物が君の中から出てきて、それが亮介君を殺したというのか?」  加奈子はこっくりと頷いた。 「ふざけるなよ?」  声を低くし、凄みを出して見せる刑事に対し、加奈子は特に反応を示さなかった。 「君が殺したんだろう?」 「多分……」  それ以降、何度となくこのやり取りは繰り広げられた。  だが、彼女の口からは常に怪物の話が出た。
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