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どうして、まるでこちらの心の内を見透かしたように。
戸惑いを隠せなかった。
考えを巡らすように窓の外を見て、それでもこちらにぎこちなく笑いかけ、そしてまた彼女は口を開いた。
「わたしの家、事情があって……。物心ついた時から、家族で車に乗って出掛けたって事がないんですよ。出掛ける時はいっつも電車を利用してました。……弟が生まれた直後に、お父さんが事故を起こしたそうなんです。相手の人を……死なせてしまったんです」
少女は後ろを振り向き、自身の家族達を――その父親を視界の端に捉えた。
母親に何事か尋ねられ、年相応の反抗的な態度でそれに答える少年。それを仕方ないなという風に見守っているその父親。
なんでもないような、一つの家族の日常の光景。
その話の内容に、いや、今この瞬間のその事実に、自分は言葉が出なかった。
「あっ、すみません、いきなりこんな話」
「いえ……あの、できればもっと聞かせてください」
思わず声に力が入っていた。
少女もきょとんとした風で驚いている。
前の席の家族達もそれにつられ、何事かとこちらへと振り向いていた。
「本当は……轢いたっていうほどの勢いはなくて、接触してしまった程度なんですけど……相手は自転車に乗ってたおばさんで、倒れた際に頭を打ってしまって……。だから、うちでは車に乗れないんです。慰謝料とかの話は済んだんですけど、お父さんは自主的に免許を返納していて……」
少女は語る。
被害者ではなく、加害者となってしまった側の――その家族から見た苦悩を。
「13年間ずっと、お父さんは毎年一人で相手のお墓参りにいって、残された旦那さんの家の前で土下座とかもして、頭を下げてきたんです。でも、ずっと顔を合わす事すら許されなくて……。それが辛かった――毎年、お父さんが『今年もダメだった』ってそう寂しそうに笑って、持っていったお土産をそのまま手にしてるのを見るのが、本当に辛かったんです」
自分の膝の上のその包装紙を思わず愕然と見つめる。
「だから言いたいんです。事故を起こした事も、被害を与えた事も言い逃れは出来ないです。でも”犯人”っていうのとは、絶対に違うって。……少なくともお父さんは逃げたりせず、ちゃんと向き合おうと必死な思いをしてきたから……だから……」
そこで、少女は言葉に詰まる。
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