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語った。
言葉があふれ出すままに語った。
必死になって自分の話を。
どうしても、その事実を伝えたかったから。
ここに乗り合わせただけの自分が、見ず知らずの赤の他人の自分が、四年前の同じ日に同じ過ちを犯し、そして同じ痛みを引き連れながら、今日この列車に乗っていた事を――伝えなくてはならないと思ったから。
自分が命を奪ったのは、河本明男さんという70代の男性。
出張で向かった先、その山間の国道。左右は藪と林に覆われていたが、道幅自体は広い二車線の直線道路。
見通しが悪かったため、制限速度以下で走っていた。
だがその右側の藪から、突如として車道へと飛び出してきた人物がいた。
まるで足をもつれさせるようにして、車線の左側までその体は流れてきた。
はっとしてブレーキを踏み、ハンドルを切ったものの、間に合わなかった。むしろ、こちらに倒れ込んできた相手の頭部を右側の車輪が直撃した。
車載カメラの映像で検証した結果、どうも何かにつまづいたかしたようで、勢いづいて車道へと身を投げ出す形になっていた。実際、接触する前に河本さんは道路へと倒れ込んでいた。
河本さんは普段からあの車道を横切って近道をしていたらしい。
そして右側は傾斜があり、そこを降りてくる際、何かに足を取られてバランスを崩したのかもしれないという。ガードレールの類で仕切られてない為、車道へとそのままの形で降りてきてしまったというのが警察の見解だった。
それらの事実が免責となった。
けれど、どうあろうと自分は一人の人間を死に至らしめた。
あの時の、車越しに伝わったあの振動……なにかに乗り上げてしまったあの感触が……今も鮮明に甦る。
それが震えとなって全身を貫く。
どうあがいても拭い去れないその感触が未だこの身を縛り付ける。
怖くて、怖くて、ただ怖くて……。
気付いた時、向かいの少女はまるで自分の事のように辛そうな眼をしていた。向こうの座席から顔だけを覗かせる母親達もポロポロと涙をこぼしている。
そして、自分の手を強く握りしめる人がいた。
その人はどんな言葉も費やさなかった。
ただ、こちらの眼を見て、そして深く頷いた。
噛み締めるよう、受け入れるよう、何度もそうやって頷いていた。
堪らず、自分も情けないような声を出していた。
良い大人が、子供のように泣いてしまっていた。
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