第4話 狐耳

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第4話 狐耳

 ぼぅっと、何かをするわけでもなく椅子に腰掛けてチャイムが鳴るのを待っているっていうのはなかなかに突き刺さる。  ああ、これが嫌だったから私は本を読むようになったんだよなーって教科書をパラパラめくりながら思った。中には予習に時間を使う人もいるけれど、ああいう人はなんか凄いなって思う。それでいて友達が話し掛けに来たりするからやっぱり凄い。  勉強してることと友達がいることは関係なくて、本を読んでいようがいまいが、やっぱり私に声をかけてくる人なんてもういなくて。  いないことに何処か安心して。  だけど、そんな状態がピリピリと胃を締め付けてくるようで。 「はぁ……」  窓の外を眺めようにも、どちらかといえば廊下側の。教室の真ん中ちょっと後ろの方に位置する私の席からはそれもできなくて。ここから見えるのは窓際で楽しそうにおしゃべりしている名前もわからないクラスメイト達だけだった。  文庫本を部屋に忘れてきた。     
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