第5話 文豪シリーズ・斜陽

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第5話 文豪シリーズ・斜陽

「伏見さんってなんでそんな風なの」 「は? なにそれ」 「んーん? 面白いなって」  目の前に小さな小川があったとして。失敗すれば大変なことになってしまうと足がすく見つつも飛び越えてしまえば案外容易だったみたいなことは現実よくあるらしく。 「意味わからんし……」  昼休み、私はふてくされる伏見さんと部室で過ごすようになっていた。  彼女が見た目ほど悪い人じゃないのはわかっていて、自身の好奇心が悪い風に転がったのがこの結果だ。  チグハグな態度の伏見さんに思わず吹き出してしまい、色々弁明の意を込めてあれこれ話しているうちに打ち解けてしまった。  否、話すことへの欲求が理屈を上回ってしまっていた。  あの日はそのまま放課後に図書室に立ち寄ることもなく。逃げるように家に帰ったのだけど、翌日、昼休みになると自分の席に座っていることが苦痛で、それまで「平気だ」と言い聞かせて誤魔化してきたはずの時間が重くのしかかっていて。  ふらふらと何処か時間を潰せる場所を求めて彷徨った挙げ句、たどり着いたのが部室だった。  他に行く宛もなく、このまま宙ぶらりんでいてもお昼ゴハンを食べる時間がなくなる。     
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