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 そのためすぐには、瑠衣の申し出を信じられないらしい。  そこまで自分は信用がないのかと、瑠衣は肩を竦めてみせる。  ……まあ瑠衣にも、その自覚はあるのだが。 「あ、サボろうとしてるわけちゃいますよ。その証拠にー」  立ち上がった瑠衣は、迷う様子なく歩き出す。  真っ直ぐ、蒼汰の席に向かって。  蒼汰の横に立つ瑠衣を、教師と生徒らがきょとんとしたように見ている。  だが瑠衣と共に視線を向けられている蒼汰は、それどころではないのか、瑠衣に顔さえ向けはしない。  そんな蒼汰の腕を、瑠衣は掴んだ。そしてそのまま、半ば無理やり蒼汰をイスから立ち上がらせる。 「え? あ、山上さ……?」 「沢城に連れてってもらうんでー。沢城いるなら信用できるでしょ?」  おどけたような口調で言えば、教師は少しだけ、悩むような様子を見せた。しかしすぐに、納得したように頷く。 「……分かった。じゃあ沢城、山上のこと頼むぞ」  そう教師に言われた蒼汰は、しかし事態が飲み込めていないらしく、教師と瑠衣を交互に見やった。 「え、えっと」 「せんせーったら俺のこと信用してくれてないー」 「普段から信用されるような行動をしていないお前が悪い」 「あははー、正論ー。とりあえず、それじゃー」  ぐいぐい蒼汰を引っ張って、瑠衣は教室を出た。  どの教室も授業中は扉が閉められていて、廊下は静かだった。昼休みの喧騒がまるで嘘のようだ。 「あの、山上さん、気分悪かったんですか? 大丈夫ですか?」  歩き出す瑠衣に連れられた蒼汰が、心配そうに瑠衣へ問いかけた。  そんな蒼汰へ振り返った瑠衣は、呆れたように目を細める。 「アホ。気分悪いんはあんたやろが」 「え? いえ、僕は別に……」 「睡眠不足だって体調崩す原因の一つや。ええからおとなしくついて来い」  強めの口調で言えば、言葉を続けようとした蒼汰は押し黙った。  瑠衣がこうやって口調を荒げることは少ない。そのため気圧されたらしい。  蒼汰の腕を掴んだまま、瑠衣は隣校舎の一階にある保健室へ向かった。
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