4/5
177人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「堪忍してやー。沢城さー、何度も言うけど、俺のことはもう放っておいてくれ。先生に頼まれたからって、俺のこと探しに来んでもええって」 「先生に頼まれたのはもちろん、クラス委員として僕は、特別な理由がない限りクラスメイトを授業に出席させる義務があります」 「それで一年のときから三年間、俺の面倒看てくれてんねやんなー。ほんますごいわー」  寝転ぼうと、瑠衣は必死に地面へへばりつき。  そんな瑠衣を起き上がらせようと、蒼汰は両手で瑠衣の腕を引っ張り。  お互いの力は均衡していて、瑠衣は微かに上半身を上げた状態、対して蒼汰は腰をやや曲げた状態で、ほとんど動かない。お互い無理な体勢のせいで、体はプルプルと震えていた。 「けどなー、沢城。真面目すぎんのもどうかと思うで。毎日そんなんで疲れへん? 宿題は一問も残さず完璧。忘れ物は一切なし。遅刻早退一度もない。俺には真似できひんわー」 「僕にも貴方は真似できません。宿題や提出物はすぐにサボる。遅刻早退当たり前。僕がこうやって来なければ、一体どれだけの単位を落としましたか?」 「心配ご無用。全部ちゃーんと計算しとるから。俺は自己責任の名の元で、ちゃんと自覚してやっとんねん。放っておいてくれ」 「却下です。先生から、貴方がサボろうとすればそれをどうにかするよう言われていますから」 「先生先生うっさいわ。なんや、あんたは先生に言われたらなんでも従うんか?」 「ええ、従いますよ」 「この真面目ちゃんが。そんなんで人生何がおもろいねん」 「今面白く生きた結果、進学が危うい貴方に言われたくありません」 「大丈夫ですー。どうにかしますー。最悪お金積んだら入れてもらえる大学行きますー」 「貴方のその価値観が僕には理解できません」 「ほー、奇遇やな、沢城。俺もやわ。俺もあんたの価値観は分からん」  蒼汰の、瑠衣の腕を掴む指に、ぐっと力が込められる。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!