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 朝の陽ざしに目を細めながら、瑠衣は駅から学校までの道を進む。  通学路には、同じ制服を着た生徒の姿が多々あった。瑠衣のように一人で歩いている者、友達同士で朝から楽しそうに談笑している者と、様々だ。  いつもの瑠衣であれば、その中を、欠伸をしながら気怠げに歩いていたことだろう。  しかし今日は違っていた。目の下には薄らと隈ができていながらも、表情には眠気のそれがない。  体は眠いはずなのだ。瑠衣は昨夜、ほとんど眠れなかったのだから。だが意識だけははっきりとしていた。そして気を抜けば意識はすぐに、あのときに持っていかれてしまう。  蒼汰にイかされてしまった、あのときに。 「……昨日のあれ、夢やったんちゃうかなー」  小さく瑠衣は呟く。  未だに――というかむしろ、一晩経って冷静になってからは特に――瑠衣は信じられなかった。蒼汰が自分にあんなことをした現実を受け入れられない。蒼汰が現実であんなことをしたと思えない。  瑠衣の耳の奥に、蒼汰の声が蘇る。自分のソレを愛撫する際に漏れる、甘い声。  瞼の裏に浮かぶのは、自分の吐き出したものを飲み込んだときの力の抜けた顔。  舌と口内で愛撫されたときの感覚が蘇り、瑠衣の体の奥が疼いた。
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