雨と黒猫、路地裏の誘い

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 まるで異世界にでも繋がっているのではないかと疑うような非現実さに頭が処理に困っているのかもしれない。  また、やってしまった。  今日も今日とて悪態をつきそうになるのを堪えて彼女は走る。  偶々干してあった傘を回収し忘れた結果がこれだ。叶うことなら発狂することも許して欲しい。そんな心境だった。  最初は「災難だねー」で終わっていた友達の声も最近では「雨女だねー」に変わってきたあたり、彼女の運の悪さがうかがい知れる。  雨の中、走り続ける姿は現代のメロスのようで、そんな下らないことを考えた彼女は頭を振る。  駅から二十分のアパートまではまだ距離がある。  今は寂れてしまったビルディングの数々の裏に隠れるようにしてアパートはある為、距離がある、と言うよりかは一々回り道を強いられているというのが現状だ。  誰もいないビルやら工場やらなら取り壊して快適な道にしてしまえばいいのに。  田舎ののびのびとした道とは打って変わってここは迷路のようだった。 ーーにゃあ  また、足が止まる。  聞き覚えのある鳴き声に振り向けば、いつかの黒猫がごみ箱の上で退屈そうに欠伸をしていた。 雨を厭わないのか、黒猫の表情に不快さは感じられない。  やがてそちらもこちらに気付いたのか、黒猫は「またお前か」とでも応えるようにひと鳴きした。     
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