赤色ヘッドライト

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赤色ヘッドライト

 夜間はむろん、天気の悪い日やトンネル走行の最中に、周辺一帯の車がヘッドライトを灯す。その色に気を配るようになったのはいつ頃からだろう。  たいていのライトは黄色っぽいが、中にはピンクが混ざったものや青味がかったものもある。けれどそれはあくまで車自体にそういう色味が施されているからの色彩の変化だ。  俺が気にかけているのは、それらとはまったく別の色の変化だ。  光の強さや車の種類に関係なく、時々、真っ赤なヘッドライトを灯して走っている車がいる。  不思議なことに、他の誰にもその車が赤いライトを灯しているようには見えておらず、地面や周辺に落ちる光に赤さはまるでない。  でも、走行中の車のライトは確かに真っ赤で、俺が知る限り、真っ赤なライトを灯しては知っている朽ちる間は必ず事故に遭っていた。  どうしてライトが赤く見えるようになったのか、その理由は判らない。ただ、俺には近く事故を起こす車がそういう形で判るんだ。  そしてもう一つ。  真っ赤なライトの真ん中が真っ黒になっている車をたまに見かける。祖の車は当然事故に遭うのだが、その事故は必ず人が亡くなる死亡事故となる。  本当に、どうしてそれが俺にだけ見えているのかは、今でもずっと謎のままだ。ただ、見えるからには最大限利用して、俺は赤いライトの車には決して近づかないようにしてきた。  でも、こんな場合はいったいどうすればいいんだろう。  高速の真ん中で俺の車のライトが真っ赤に染まった。しかも前の車に反射する光を見る限り、赤い光の真ん中は真っ黒だ。  夜間だというのに、周りは車で溢れていて、停車なんてとてもできる状態じゃない。サービスエリアやパーキングエリアどころか、ちょっとした避難地帯すら見当たらない。  このまま走り続けたら命にかかわる。けれど車を停められる場所がない。  こんな状態に陥るなら、赤いライトなど見えない方がマシだった。知らない方がマシだった。  そんな思いを渦巻かせながら、迎えてしまう『その瞬間』から逃れるため、俺は停車できる場所を求めて夜の高速を走り続けた…。 赤色ヘッドライト…完
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