篠田明の場合

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 倒れていたのは八つばかりの幼い、それでいて「篠田警視」の顔をした子供。子供の耳は金色の獣の耳。尻からは同じく金色の尻尾が垂れ下がっている。そして、からん、と髑髏(どくろ)が転がっている。 「どういう事だ……?」  ようやく口を利いた先程の刑事を代表に見立てるように、くい、と親指で子狐を指差す。 「こう云う事さ。「あけ」という名の子狐が「篠田明警視」という人間に化け、警察に潜り込んでいた」 「信じられねえ……」 「信じた方が身のためだぜ。これからは、な」 「アンタは……アンタは何者なんだ……?」  薄く貴美島は笑った。 「狐持ち、さ。此処に来た時説明を聞いただろう。狐を使役する呪術者だ」 「じゃあ……この人を……」 「公安の命令っていうのは本当だ。企画は俺だがな。名前も本名。文句があるか」  おそるおそる刑事達が気絶したままの子狐を見つめた。 「こいつを……如何するんだ……?」 「そっちが俺の本当の仕事で機密事項に当たる。世話になったな。荷物は公安本局に送っておいてくれ」  ひょい、と力無いあけ、を持ち上げた。 「と、最後に見ておくか」  「篠田警視」に送られた最後のメールにはただ一文。 差出人「怨憎会苦」「この世に真の地獄を」
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