1.出会い

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 かかっている曲は、俺でもわかる。ワルツだ。こんなクラシックの曲が流れる中に、声援が響くギャップに、俺はかなりひいていた。それでも、隣の酒田は、必死な様子。 「九十九番!」  酒田が叫ぶ番号を、俺もフロアの中で探す。でも、それは案外すぐに見つかった。何せ、フロアの中で目立つのだ。  同じフロアにいる選手たちより抜きんでて背も高いし、動きのキレはいい。かっちり髪を固めた黒い髪に、大きなたれ目とにこやかな笑顔。ゴージャスな雰囲気を醸し出すイケメンな彼に、周囲の女の子たちに目が釘付けだろう。そして、彼と共に踊っている女の子も、けっこう背が高く、なかなかの美女だ。そして、真っ青なドレスがフロアに咲く大きな華のようだ。 「九十九番!」  曲が段々とボリュームが下がっていく。それとともに、フロア上の選手たちが立ち止まり、観客へ頭を下げた。同時に盛大な拍手が体育館の中を響く。一組、一組がフロアを下がっていくのを見送る。その中でも立ち姿が美しい彼らに、ついつい視線が釘付けになる。
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