3.気付く

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「百十番!」 「百十番!」  彼の背番号を呼ぶ声が背後であがる。俺も応援しようと手を口に添えようとしたとき、いつの間にか、安藤くんたちが目の前に移動してきていた。 「安藤!逢坂!」  酒田の呼ぶ声とともに、二人は目の前で美しいポーズを決め、まさに、ドヤ顔を俺たちに見せつけていく。その一瞬。俺の目を見て安藤くんが微笑んだ。その美しい微笑みに、俺は応援するつもりだった声が、喉の途中で止まってしまう。  安藤くんたちは、あっという間に俺たちの目の前を離れ、フロアの中央に移動していった。 「うわぁぁ、ちょっと、安藤先輩、今日、ヤバイ」 「う、うん、すごい、カッコいい」  俺を挟んで両サイドの女の子たちが騒いでるけど、俺の方はそれどころじゃなかった。どうしたというのか。胸のドキドキが止まらない。踊っている時の彼がすごくカッコいいのはわかっていたこと。だけど、なんで自分がこんな気分になるのかがわからず、俺は思わず頭を抱え込んだ。
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