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そして財布から五千円札を取り出すと、メモとともに、ローテーブルに置いた。
『お世話になったみたいで、ごめんね。飲み代、置いておきます。 葛木』
振り返ると、まだスヤスヤと寝ている安藤くん。
その唇に目が吸い寄せられそうになるのを、ブンブンと頭を振って煩悩を振り払う。
もう、彼と会ってはいけない。彼に強く惹かれている自分を再認識してしまった俺は、無理やり視線をはずした。そして逃げるように、安藤くんの部屋から抜け出した。
俺は、見知らぬ街の風景に不安になりながらも、携帯片手に駅を探しながら歩き出した。
蝉の鳴き声が響く中、空には、すでに太陽が昇り、ジリジリと俺の肌を焼き始めていた。
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