僕たちのミライ

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友ヶ島を散策してきたあと、佳子は鯛が食べたいと言い、港の近くのお店に入った。 「トンカツとかから揚げの方がええの?」と佳子が真面目な顔をして聞くものだから、「そうや、肉が食べたい!」と冗談で言ってみようかとも思ったが、どうせ決定権は僕にないんだから、無駄なことはやめておいた。 佳子は海鮮丼を堪能しながら、「あー、おいしい」と幸せそうな声を出した。 「もし、妊娠してたら、鯛も生の魚もあんまり食べやん方がいいっていうやん?」 「そうなんや?」 「せやねん。友ヶ島も足元不安定やったし、妊婦やったら危なかったかも。私まだ、授からんくて良かったわあ」 その台詞は額面通りに受け取ってもいいのか?僕は思わず構えた。妊活の話はなかなかナイーブだ。 どんな返事が正解か?瞬時に答えがでなかったし、考えたところで難しい問題だった。これがテストに出ていたら、僕は赤点かもしれない。文系とは言え、日本語が得意なわけじゃない。 僕はまた、めでたいでんしゃの中に戻ったように、何も話せなくなってしまった。 しかし、ここは電車ではない。このままでは、どこへも行けない。 佳子と、進んで行かなければならないのに。 僕は、半ば強引に、佳子の抱える荷物を半分奪う。自分の中の自分すら、追い付かないようなスピードで。 「なあ、一人で抱え込まんといてよ?そりゃあ、男は身ごもられへんから、佳子に頼ってしまうけど、できるだけ一緒に考えたいんや」
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