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佳子はきっと、聞いてくれる誰かがほしかったのだ。
一生の話し相手になると決めたのは、更にその5年後。
長いものに巻かれる僕が、バラの花束を用意してサプライズのプロポーズ……をするわけもなく、坦々と毎日が過ぎていたときだった。
二人でテレビを見ていたら、結婚情報誌のCMが流れた。僕は確かスマホを触っていて、佳子がそのCMを真剣に見ていることに気付かなかった。
「なあなあしょーちゃん」
「ん?」
「そういえば、どうする?結婚する?結婚せーへん?どっち?」
二択しかなければ、答えは決まっている。
「する」
「ほな、式場の見学、予約しとくわ」
今ほかに考えることがあるだろう……と、思った僕は、その通りに伝えた。高校生のときとは違うのだ。
「その前に、言うことあるやろ?」
お互いの実家にいつ挨拶に行く?とか、いつ入籍する?とか、いろいろ言うことあるやろ。というか、僕もちゃんとしたプロポーズの言葉を言わなければならないんだけど……
「せやな。言うん忘れてたわ。ありがとうって」
想定外。
「……こちらこそ、ありがとう」
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