アイが、多すぎる。

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佳子は、脳と口が直結している人間だった。 妊活一回目のチャレンジが上手くいかなかったとわかったのも、佳子が「毎月のムーンさん、来はったわあ」と、あっけらかんと言ったからだった。 ムーンさんというのは佳子が付けた愛称で、いわずもがな月経のことである。 最近まで何も考えていなかった僕だったが、妊活を意識し始めてからは「子どもがいる未来」というものを想像するようになっていた。 時に、僕はそれを口に出していた。「子どもの名前は何にしよか、もし男の子やったら……」という風に。それを聞いた佳子は、びっくりしたように目を丸くしたけれど、すぐにいつもの調子で「そうやなあ……考えとくわ」と答えた。 だから、鈍感な僕は気付かなかったんだ。佳子が、秘密を抱えていることに。
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