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友ヶ島に渡るフェリーは混雑していた。整理券をもらったあと、乗船まで1時間の空き時間ができた。佳子が、近くにある神社に行きたいと言ったので、断る理由もない僕はついていった。
淡嶋神社という神社だった。雛人形やタヌキの信楽焼、招き猫など、境内には様々な種類の人形が置いてあった。不気味な迫力があり、肌寒さを感じるほどに怯んでいた。
佳子はそんな僕の手を引き、「女性の病気と子授けに効く神様やから、さ、拝んで」と指示を出した。
そんな、神様を薬みたいに言うのはどうなんよ、と思ったけれど、先程の話も頭をよぎり、力を込めて両手を合わせた。モヤモヤを押し固めるように。必死な僕を見た佳子は、神様の前だと言うのに「急にどうしたん」と大きく笑った。
「大丈夫って言うたやんか」
「大丈夫やよ」
何の根拠もないのに。
「せやな、大丈夫や」
またしても無責任な発言だったが、佳子は急に腑に落ちた顔をして、やっと手を合わせた。
「しょーちゃんが大丈夫って言ったら、なんか、大丈夫な気ぃしてくるわ」
申し訳ない気持ちに拍車が掛かる。
「ありがちな台詞やん」
自分で覆すなんて、どうかしてる。頼りない男だけど、嘘はつきたくない一心だった。
佳子は閉じていた目を開けた。罵声の1つや2つ飛んでくるだろうかと構えたが、佳子は予想に反し、今度はニィと笑った。
「ほな、絵馬書いてくれへんかな。しょーちゃんの力、試してみよら」
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