4人が本棚に入れています
本棚に追加
意を決して、焦って噛まないようにゆっくりと話を始める。
「......ここのカフェは、父から受け継いだんです。 父がまだ元気だった頃は、こんな小さなカフェでも繁盛していて、この町の界隈で知らない人はいないほどに人気でした。
わたしは父の仕事を手伝う傍ら、仕事終わりにコーヒーのノウハウや簡単なラテアートを教えてもらっていたんです。
そしてここのカフェが拡大化を目指していた矢先です。
ーー父が病気で倒れたんです。
わたしに母はおらず一人っ子なので、ここを継げるのはわたししかいませんでした。 ですが、人とコミュニケーションを取るのが苦手なわたしは拡大化計画者の方と会話ができずに、結果としてカフェの拡大化は白紙になったんです。
いまは父の意思を受け継ぐために、白紙になってしまった拡大化計画を取り戻すために頑張っているんです。 あ、因みに父は生きてますのでご安心ください」
そこで一旦、話を止める。 せっかくのエスプレッソが冷めてしまうからだ。
わたしの思惑に沿って、若井さんは反芻するような表情でエスプレッソに口を付けた。 そして、
「もかさんは、どこで花言葉を学んだんですか?」
数年ぶりに下の名前で呼ばれて、新鮮みがあった。
わたしが花言葉を学んだのは、
「......お花って、美しいじゃないですか」
ふっと微笑みかける。
この世に存在する花は、どこか美しく、時として懐かしさを感じさせる植物だ。
わたしにみどりのゆびは無いが、見て詠う事ならできる。 花言葉はその延長線で覚えた事だ。
最初のコメントを投稿しよう!