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若井さんは話を続ける。
「母親のカフェを宣伝するために田舎町を歩き回ったくらいですからね。 ここを第二の故郷と呼べるようにしたいですよ」
話が終わったタイミングど同時に鳩時計から鳩が飛び出し、時刻は四時を告げる。 今日の営業は、終了だ。
時計に顔を向けた若井さんは、
「もうこんな時間ですか。 ......今日はありがとうございました。 故郷を思い出せて楽しかったです」
カウンターチェアから降り、会計を済ませた若井さんはカフェを出る前にもう一度こちらを振り返って、「ありがとうございました」と礼を述べた。
わたしもぺこりと頭を下げて返す。
カフェから出た事を確かめてから、ラテボウルとグラスを片付けようとしたときだった。
コースターに下敷きになるように、一枚の紙切れが挟まれていたのだ。 当然、このカフェの物ではないその紙に、少しの不信感を抱きながら抜き取る。
どうやらその紙は名刺のようで、そこに書かれていたのがーー。
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