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少しずつ遅れ始めた一穂の足にわずかな異変を感じる。引きずるというほどではないが、左足がおかしい。
「ちょっと止まろう」
「でも、時間が……」
「いいよ。もし野宿になっても俺がなんとかしてやるから安心しろ」
一穂をゆっくりと石に座らせて前に膝まづく。
靴に触れただけで顔をしかめるなんて、結構痛いに違いない。
「靴を脱がせるから、ちょっと我慢して」
「い、いいよ。自分で脱げるから」
「いいから、じっとしていて」
靴と靴下を脱がせると、思った通り赤くなっていた。
「ごめん、僕のせいで」
泣きそうな声を聞いて、聞こうとした事を引っ込める。いつからとか、どうして言わなかったんだとか、今さら言っても仕方がない。
まずは何かで冷やさないと。せめて水があればな。
「そんな顔するな」
「でも………」
このままだとずっと落ち込んでそうだ。
俺は一穂の顎に手をかけると唇を近づけて軽くキスをした。
「桜庭君……今………」
「まだダメか……」
もう一度顔を近づけると、さっきより深いキスをした。
「な、何………ん……」
誰にも関わらない。誰も好きになんかならない……そう思っていたのにな………。
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