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唇を話すと、一穂がくたりと持たれてきた。
「ハハッ、大丈夫か?」
可愛いなぁ。
ぎゅっと抱き締めて頭を撫でる。
体を離して一穂に靴下と靴を履かせると、その前に背を向けて座る。
「腕だして」
素直に前に伸ばされた腕の間に頭を入れ腕を引っ張ると、一穂の胸が背中にあたった。
「大人しくしてろよ」
コクンと頷く一穂をおぶって歩き出す。小学生3年から去年までバスケを続けていたから体力はあるはずだが、やはり重い。
華奢だと思っていてもやっぱり男だな。皐月とは違う感触だが、ちっとも嫌じゃない。それどころか、俺に体重を預けてくれるのさえ嬉しい。
一穂を落とさないように気を付けながら歩いていると、「誰か来るよ」と一穂が指差した。
おーいと言いながら走ってきたのは、グループリーダーの安藤と会長補佐の田辺だった。田辺が安藤に知らせてくれたんだろう。
「山岸どうしたんだ?」
「崖だから落ちて、足を挫いたみたいなんだ」
「俺が山岸を呼び出したから……」
田辺の顔が曇る。
「田辺君は悪くないよ。僕が勝手に落ちたんだ。桜庭君にまで怪我させてしまったし……」
「誰のせいでもないよ。それより迎えにきてくれて助かったよ」
俺の言葉に安藤が頷いた。
「そうだよ。それよりもうすぐバスが出るから急ごう」
俺たちは二人の案内のお陰で無事にバスに乗ることが出来た。
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