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クラスの半分以上が食堂に行くので、空いている席を自由に使いながら5人で弁当を食べるのが普通になりつつある。
「一穂、足はもう平気か?」
「うん。大丈夫。色々ありがとうね」
一穂の足は軽い捻挫だった。あの時かばいきれなかったのに責任を感じて、あれから毎日一緒に登下校しているんだ。
「良かった。あ、これ食べるか?一穂唐揚げ好きだろ」
俺は弁当箱から唐揚げを1つ取ると一穂の弁当箱に乗せた。
「わあ、いいの?桜庭君唐揚げ好きなのに」
「いいよ」
「あの………山岸と俺達との態度に差がありすぎないか?」
拗ねたように言う田代に、気のせいだろと返すと、一穂以外の3人から明らかに違うと突っ込まれる。
「いつの間にか名前呼びしてるしね」
「あっ、それ言っちゃ……」
安藤の言葉に何故か一穂が落ち込んだ。
誰とも深く関わりたくないという俺の態度が一穂を傷つけた。名前を呼んでくれないと泣いた顔が忘れられない。
だから。
「友達なんだから普通だろ」
「桜庭君……」
「じゃあ、俺も名前で呼んでよ」
川上がおねだりポーズをするけど……。
「あれ、お前の名前何だった?」
「本気で忘れてるよな……」
ガックリ肩を落とす川上をお気の毒にとみんなが笑った。
なるほどな。一穂や俺を嫌っていた田辺が何でわざわざ隣の教室から来ているのかは分からないが、田辺の言うとおり大勢で食べた方が楽しい。
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