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「正隆」
「はぁ?」
「俺の名前、川上 正隆って言うんだよ。友達だったらちゃんと覚えろよ、冬樹。お前とは中2も同じクラスだったのに……」
ぶつぶつ言っている川上の肩に安藤が手を回して慰めている。
川上、俺の名前覚えてたんだな。
……友達か。今さらだけど、改めて言われるとちょっと恥ずかしい。
「覚えとくよ、正隆」
「冬樹………」
俺に抱きつこうとした川上を押さえて、田辺が言った。
「俺とも友達だよな?」
田辺と?うーん、どうなんだろうと首を捻る俺を見て、田辺が唇を噛んだ。
━━まさかと思うけど、泣かないよな。
大きな目がうるうると潤んできたので慌てて答える。
「そ、そうだな。飯友、そう飯友だ」
「飯友……」
不満げな田辺に安藤が「飯友って、飯を食う友達だから、立派な友達だよ」と、慰めてるのかどうか分からない言葉を口にする。
「そ、そうか」
なのに、田辺がちょっと嬉しそうに笑った。
田辺って、俺の事嫌いなんだよな……。オリエンテーションでも突っかかってきたし。あの時は一穂を苛めてるのに腹が立って言いたいことを言ったから更に嫌われているはずだし……。
普段は生意気なのに、笑うと可愛い。もし弟がいたらこんな感じなのかもしれないな。
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