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「じ、じゃあ、俺の事も伸也って……」
「あっ!」
「な、何?」
俺は田辺から視線を外し、隣を向いた。
「一穂、俺の事桜庭君って呼ぶよな。もしかして、俺の事友達って思ってないとか……」
改めて考えるとそうかもしれない。なんせ出会いから最悪なことしたし。それに…すっかり忘れてたけどオリエンテーションの時も無理矢理キスをした。
━━男に2度もキスされるなんて嫌だよな。俺ならそんな気持ち悪いやつを友達だとは思えない。
「あ、あの……桜庭君……」
「いいんだ。さっきの言葉は忘れてくれ」
怪我させた責任とか言って登下校を一緒にしていたが、本当は嫌だったのかもしれない。今日のお弁当も川上が無理矢理声かけたから来てくれただけだし……。
怖くなって離れようとした俺に一穂が叫んだ。
「嫌だ。また桜庭君1人の考えで僕を遠ざけるの?勝手に結論を出す前に僕に聞いてよ。僕は桜庭君の事、すごく大切だって思ってるよ」
「本当に?」
「うん。………桜庭君って呼んでるのは、恥ずかしかったのと桜庭君が名前で呼ばれるの嫌なのかなって思ってたからだよ」
あー、また一穂を傷つける所だった。
━━大切な人に対してはどうしてこんなに臆病になってしまうんだろう。
「ごめんな。嫌じゃないから、名前で呼んで欲しい」
恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。
「冬樹」
隣から優しい一穂の声が聞こえた。
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